前回の記事では、ロサンゼルスの自動車事情の概要について解説しました。今回は、ロサンゼルスでの車購入事情と具体的な購入の流れについて、新車・中古車ディーラー、個人売買の全てを網羅し、さらに詳しく掘り下げていきます。特にご家族で住む予定の方や日本企業からの駐在者にとって役立つ情報を提供します。
ロサンゼルスでの車の購入方法
ロサンゼルスで車を購入する方法は、大きく分けて以下の3つがあります。
- 新車ディーラーで購入: メーカー直系のディーラーから新車を購入する方法です。
- 中古車ディーラーで購入: 中古車専門のディーラーから中古車を購入する方法です。
- 個人売買で購入: 個人から直接中古車を購入する方法です。
それぞれのメリット・デメリット、注意点を詳細に見ていきましょう。
1.新車ディーラーで購入
- メリット:
- 最新モデルを購入できる。
- メーカー保証が付いている(通常3年または36,000マイル)。
- 試乗ができる。
- ディーラーの担当者から詳しい説明を受けられる。
- ローンを組みやすい(クレジットヒストリーがなくてもメーカー系の金融機関で審査が通りやすい場合がある)。
- 下取り車がある場合、スムーズに手続きができる。
- デメリット:
- 中古車に比べて価格が高い。
- 値引き交渉が難しい場合がある(特に人気車種や新型車)。
- オプションや付属品を勧められることが多い。
新車ディーラーでの注意点:
- MSRP(Manufacturer’s Suggested Retail Price:メーカー希望小売価格): MSRPはあくまでも希望小売価格であり、実際の販売価格はディーラーによって異なります。
- インセンティブ: メーカーやディーラーによっては、キャッシュバック、低金利ローン、リースなどのインセンティブを提供している場合があります。
- オプション: 必要のないオプションを勧められることがあるため、本当に必要なものだけを選ぶようにしましょう。
- 交渉: 値引き交渉は難しい場合もありますが、複数のディーラーで見積もりを取ることで、より良い条件を引き出せる可能性があります。
2.中古車ディーラーで購入
- メリット:
- 新車に比べて価格が安い。
- 様々な車種や年式、走行距離の車から選べる。
- ディーラーによっては保証が付いている場合がある(Certified Pre-Owned (CPO) 車など)。
- デメリット:
- 車(特に走行距離が多い車)の状態に個体差がある。
- 過去の整備履歴などが不明な場合がある(Carfaxなどのレポートで確認できる場合もある)。
- 保証期間が短いか、保証がない場合がある。
中古車ディーラーでの注意点:
- CPO(Certified Pre-Owned)車: メーカーが定めた基準を満たした中古車で、通常は保証が付いています。
- Carfax/AutoCheckレポート: 車の過去の履歴(事故歴、所有者履歴、整備履歴、走行距離メーター改ざんの有無など)を確認できるレポートです。購入前に必ず確認しましょう。
- 整備記録: 可能であれば、過去の整備記録を確認しましょう。
- 保証内容: 保証が付いている場合は、保証期間、保証範囲、免責金額などを確認しましょう。
3.個人売買で購入
- メリット:
- ディーラーで購入するよりも安く購入できる可能性がある。
- 前所有者から直接車の状態や整備履歴について聞くことができる。
- デメリット:
- 車(特に古い車)の状態を自分で確認する必要がある(整備士に依頼してPre-Purchase Inspectionを受けることを強く推奨)。
- 取引や書類手続き(名義変更など)をすべて自分で行う必要がある。
- トラブルが発生した場合、自己責任となる。
- 支払い方法が現金またはキャッシャーズチェックに限られることが多い。
- スキャム(詐欺)に遭うリスクがある。
- 保証がない。
個人売買で購入する場合の注意点(詳細)
- 相手の身元確認: 免許証、車の登録証(Title)、保険証などの提示を求め、相手の身元を確認しましょう。
- 現車確認と試乗: 必ず昼間に、明るい場所で現車確認を行いましょう。試乗では、様々な道路状況で運転し、異音や不具合がないか確認しましょう。
- Pre-Purchase Inspection(購入前検査): 必ず整備士に依頼してPre-Purchase Inspectionを受けましょう。これにより、車の状態を客観的に評価し、隠れた不具合を発見することができます。費用はかかりますが、後々のトラブルを避けるためには非常に重要です。
- Carfax/AutoCheckレポートの確認: Carfax (https://www.carfax.com/) やAutoCheck (https://www.autocheck.com/) などのサービスを利用して、車の過去の履歴(事故歴、所有者履歴、整備履歴、走行距離メーター改ざんの有無など)を確認しましょう。
- 名義変更手続き: DMVで名義変更手続きを確実に行いましょう。名義変更を怠ると、後々トラブルに巻き込まれる可能性があります。Title(所有権証明書)がきちんと発行されているか確認が必要です。
- 支払い方法: 現金またはキャッシャーズチェックでの支払いが基本です。個人間での送金(Venmo、Zelleなど)はトラブルの原因となる可能性があるため避けましょう。キャッシャーズチェックは銀行で発行してもらう必要があります。
- スキャムに注意: あまりにも安い価格で販売されている場合や、連絡が不自然な場合(例えば、海外にいて車を送ると言われたり、すぐに送金するように急かされたりする場合)はスキャムの可能性があります。安易に個人情報を教えたり、お金を振り込んだりしないようにしましょう。Craigslistなどで個人売買の車を探す場合は特に注意が必要です。
- 契約書: 口約束だけでなく、売買契約書を作成し、署名するようにしましょう。
個人売買に役立つサイト
- Craigslist: https://losangeles.craigslist.org/ (地元の人々が利用する掲示板。車だけでなく、家具や求人情報なども掲載されている。ただし、詐欺に注意が必要)
- びびなび ロサンゼルス: https://losangeles.vivinavi.com/ (ロサンゼルスの日本人向け情報サイト。掲示板で車の売買情報が掲載されていることがある。生活情報やイベント情報も豊富)
- mixb ロサンゼルス: http://los.mixb.net/ (ロサンゼルスの日本人向け掲示板。こちらも車の売買情報が掲載されていることがある。求人情報や生活情報なども掲載)
- その他日本人コミュニティのウェブサイトやSNSグループ: ロサンゼルスにはLighthouse、Mixb等他にも様々な日本人コミュニティが存在します。これらのウェブサイトやSNSグループでも、車の売買情報が共有されていることがあります。
車購入の流れ(詳細版)
ここでは、中古車ディーラーで購入する場合の流れを例に、具体的な手順を解説します。新車ディーラーで購入する場合も、基本的な流れはほぼ同じです。個人売買の場合は、上記の注意点を踏まえ、当事者同士で交渉・手続きを進めることになります。
- 情報収集: 予算、車種、年式、走行距離、必要な装備(例えば、家族連れであれば後部座席エンターテイメントシステムや安全装備など)などの希望条件を具体的に決め、オンラインの自動車情報サイトなどで情報収集を行います。複数のサイトを比較することで、相場観を養うことができます。
- Autotrader: https://www.autotrader.com/ (全米最大級の車情報サイト。新車・中古車の検索、価格比較、レビューなどが可能)
- Cars.com: https://www.cars.com/ (新車・中古車の検索、価格比較、レビューなどが可能)
- Kelley Blue Book (KBB): https://www.kbb.com/ (車の価格相場を調べるのに非常に役立つ。車の評価やレビューも豊富)
- Edmunds: https://www.edmunds.com/ (車のレビュー、比較、価格情報などが豊富)
- ディーラー選び: 評判の良いディーラーを選びます。オンラインのレビューサイト(Yelpなど)や口コミサイト、知人からの紹介などを参考にしましょう。特に、日系の中古車ディーラーは、日本語で対応してくれる場合があり、渡米直後の方にとっては安心です。
- Yelp: https://www.yelp.com/ (レストランやお店のレビューサイトとして有名だが、ディーラーのレビューも掲載されている)
- Google Reviews: Googleマップなどでディーラーを検索すると、レビューを確認できます。
- 現車確認(Test Drive): 気になる車が見つかったら、ディーラーに連絡して現車確認と試乗(Test Drive)を予約します。事前にアポイントを取っておくことで、スムーズに対応してもらえます。現車確認では、以下の点を重点的にチェックしましょう。
- 内外装の状態: キズ、へこみ、汚れ、シートの破れなどを確認。
- エンジンルーム: オイル漏れ、異音、バッテリーの状態などを確認。
- タイヤ: 溝の深さ、偏摩耗などを確認。
- 走行距離計: メーターの改ざんがないか、Carfaxレポートと照らし合わせて確認。
- 電装系: ライト、ウインカー、エアコン、オーディオなどの動作を確認。
- 異臭: 車内に異臭(カビ臭、タバコ臭など)がないか確認。
- エンジンの状態: スムーズに加速するか、異音がないかなどを確認。
- ブレーキの状態: スムーズに制動するか、異音がないかなどを確認。
- ハンドリング: ハンドルの操作性、安定性などを確認。
- 乗り心地: 路面の凹凸を乗り越える際の衝撃などを確認。
- 価格交渉: 車の状態や市場価格(KBBなどで確認)、競合ディーラーの価格などを考慮して、価格交渉を行います。値引き交渉だけでなく、保証内容、下取り車の価格、金利なども交渉できます。
- Out-the-Door Price: 車両価格だけでなく、税金、登録料、手数料などを含めた最終的な支払額(Out-the-Door Price)を確認することが重要です。
- 交渉の余地: 特に中古車の場合は、交渉の余地があることが多いです。強気に交渉してみましょう。
- 契約(Purchase Agreement): 価格交渉がまとまったら、契約書(Purchase Agreement)に署名します。契約書の内容を隅々までよく確認し、不明な点はディーラーの担当者に質問しましょう。特に以下の点に注意が必要です。
- 車両情報: 車種、年式、走行距離、VIN(Vehicle Identification Number:車台番号)などが正しく記載されているか。
- 価格: 車両価格、税金、登録料、手数料などが明記されているか。
- 保証内容: 保証が付いている場合は、保証期間、保証範囲、免責金額などが明記されているか。
- キャンセルポリシー: 契約後のキャンセルが可能かどうか、可能な場合は条件などを確認。
- 支払い条件: ローンを組む場合は、金利、返済期間、月々の支払額などを確認。
- 保険加入: 車の保険に加入します。カリフォルニア州では、自動車保険への加入が義務付けられています。複数の保険会社から見積もりを取り、補償内容と保険料を比較検討しましょう。
- Liability Insurance: 対人・対物賠償責任保険。最低限加入が義務付けられている保険。
- Collision Insurance: 車両の衝突による損害を補償する保険。
- Comprehensive Insurance: 盗難、火災、自然災害など、衝突以外の損害を補償する保険。
- 車両登録(Vehicle Registration): DMV(Department of Motor Vehicles:車両管理局)で車両登録を行います。必要な書類は、購入証明書、保険証、身分証明書などです。
- Title Transfer: 所有権の移転手続きを行います。
- Registration Fee: 登録料を支払います。
- Smog Check: 排気ガス検査が必要な場合があります。
- 納車(Delivery): 車を受け取ります。納車時には、以下の点を確認しましょう。
- 車の状態: 契約時の状態と相違ないか。
- 付属品: 取扱説明書、スペアキー、スペアタイヤなどが揃っているか。
- 書類: 契約書、保証書、登録書類などが揃っているか。
日本企業からの駐在の場合の補足情報(詳細)
日本企業からロサンゼルスに駐在する場合、個人の状況や会社の規定によって、車の購入に関するサポート内容が大きく異なります。事前に人事担当者や赴任担当部署に確認し、不明な点は質問するようにしましょう。
- 住宅手当と車の関係: 住宅手当に駐車場代が含まれているか確認しましょう。含まれていない場合は、別途駐車場代を考慮する必要があります。
- 赴任手当と車の関係: 赴任手当の中に、車の購入費用や初期費用(登録料、保険料など)が含まれているか確認しましょう。
- 車両購入/リース補助: 会社によっては、車両購入費用の一部または全額を補助してくれる場合や、リース契約の費用を補助してくれる場合があります。補助金額や条件は会社によって異なります。
- 社用車/会社名義のリース: 会社から社用車が支給される場合や、会社名義でリース契約をする場合があります。この場合、個人のクレジットヒストリーがなくても車を利用できるメリットがあります。ただし、私用での利用に制限がある場合や、車種が限定されている場合があります。
- 保険の手配: 会社が保険の手配をしてくれる場合や、保険料を補助してくれる場合があります。保険の種類や補償内容についても確認しておきましょう。
- レンタカーの手配: 渡米後すぐに車を購入しない場合、会社がレンタカーを手配してくれる場合があります。
- 提携ディーラー/エージェント: 会社が提携しているディーラーや不動産エージェントを紹介してくれる場合があります。これらのディーラーやエージェントは、日本語で対応してくれる場合があり、渡米直後の方にとっては安心です。
- 必要書類のサポート: 車の購入や登録に必要な書類の手続きを会社がサポートしてくれる場合があります。
- クレジットヒストリーがない場合の対応: 渡米直後でクレジットヒストリーがない場合、ローン審査が難航することが予想されます。会社からの紹介状や保証書でカバーできる場合もありますが、現金一括で購入するか、リース契約を検討する方がスムーズに進む場合があります。この点についても、事前に会社に相談しておきましょう。
- 帰任時の対応: 帰任時に車をどうするか(売却、日本へ持ち帰るなど)についても、事前に会社に確認しておきましょう。売却の手続きを会社がサポートしてくれる場合もあります。
特に確認すべき点:
- 車の購入/リースに関する補助金額と条件
- 社用車/会社名義リースの有無と利用条件
- 保険の手配/補助
- レンタカーの手配
- 提携ディーラー/エージェントの有無
- 必要書類のサポート
- クレジットヒストリーがない場合の対応
- 帰任時の対応
家族で住む場合の車の選び方
家族でロサンゼルスに住む場合、以下の点を考慮して車を選びましょう。
- 乗車人数: 家族全員がゆったりと乗れるスペースがあるか。チャイルドシートやジュニアシートを複数設置する場合も考慮しましょう。
- 荷物スペース: ベビーカー、チャイルドシート、旅行用荷物、買い物などで必要な荷物を十分に積めるスペースがあるか。特に、週末のまとめ買いや旅行などを考慮すると、広い荷室が役立ちます。
- 安全性: 安全装備(エアバッグ、衝突安全性能、横滑り防止装置など)が充実しているか。IIHS (Insurance Institute for Highway Safety) やNHTSA (National Highway Traffic Safety Administration) のウェブサイトで、車種ごとの安全評価を確認できます。
- 燃費: ガソリン代を考慮して、燃費の良い車を選ぶか。ハイブリッド車や電気自動車も選択肢に入れると良いでしょう。
- 快適性: 長距離移動や渋滞を考慮して、快適な乗り心地の車を選ぶか。後部座席の居住性、エアコンの性能、静粛性なども重要なポイントです。
- 駐車のしやすさ: ロサンゼルスの駐車場は狭い場所も多いため、駐車しやすいサイズの車を選ぶか。バックカメラや駐車支援システムなどが付いていると便利です。
ミニバン、SUV、クロスオーバーSUVなど、乗車人数や荷物スペースが確保でき、安全性能も高い車種がおすすめです。
まとめ
ロサンゼルスで車を購入する方法はいくつかありますが、渡米直後でアメリカの車の事情に詳しくない場合は、新車または中古車ディーラーで購入するのがおすすめです。特に、会社からのサポートを受けられる場合は、ディーラーでの購入が最もスムーズな方法と言えるでしょう。個人売買は、価格交渉の余地がある反面、リスクも伴うため、十分な注意が必要です。購入の流れを把握し、しっかりと準備をしておくことで、スムーズに車を購入することができます。
この記事で紹介したサイト一覧
- Autotrader: https://www.autotrader.com/
- Cars.com: https://www.cars.com/
- Kelley Blue Book (KBB): https://www.kbb.com/
- Yelp: https://www.yelp.com/
- Craigslist: https://losangeles.craigslist.org/
- びびなび ロサンゼルス: https://losangeles.vivinavi.com/
- mixb ロサンゼルス: http://los.mixb.net/
- Carfax: https://www.carfax.com/
- AutoCheck: https://www.autocheck.com/
- IIHS (Insurance Institute for Highway Safety): https://www.iihs.org/
- NHTSA (National Highway Traffic Safety Administration): https://www.nhtsa.gov/
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