アメリカへの渡航が決まったら、パスポートやビザの手配と並行して、健康管理も重要な準備の一つです。特に、海外では日本と異なる感染症のリスクがあるため、適切な予防接種や健康診断を受けておくことで、安心して渡航し、現地での生活を送ることができます。この記事では、アメリカ渡航前に推奨される予防接種、特に就学に必要な情報、その他の健康管理、そして準備のポイントについて詳しく解説します。
アメリカ渡航前に推奨される予防接種
アメリカへの入国に際して、必須の予防接種はありません。しかし、渡航者の年齢や健康状態、渡航期間、滞在中の活動内容、渡航先(都市部か地方かなど)によって、推奨される予防接種が異なります。以下の予防接種は、任意ではありますが、受けておくと安心です。
- A型肝炎: 汚染された水や食べ物から感染する肝炎です。特に外食が多い方や衛生環境が良くない地域へ行く予定のある方は、接種を検討しましょう。
- B型肝炎: 血液や体液を介して感染する肝炎です。医療従事者や性的接触の機会がある方は、接種を検討しましょう。
- 破傷風: 土壌中の菌が傷口から侵入して感染する病気です。定期的な追加接種が推奨されています。
- 麻疹・風疹・水痘(MRワクチン、水痘ワクチン): これらの感染症は、日本よりも海外で感染するリスクが高いです。未接種または罹患歴がない場合は、接種を検討しましょう。特に子供を同伴する場合は、子供の予防接種歴を確認し、必要に応じて追加接種を検討しましょう。
- インフルエンザ: 毎年流行する感染症です。流行時期に渡航する場合は、接種を検討しましょう。
- 狂犬病: 動物に咬まれることで感染する病気です。動物と接触する機会が多い方は、接種を検討しましょう。アメリカでは狂犬病の発生は少ないですが、リスクがないわけではありません。特に、ハイキングやキャンプなどで自然に触れる機会が多い場合は注意が必要です。
地域ごとの注意点:
アメリカは広大なため、地域によって注意すべき感染症が異なる場合があります。例えば、以下のような地域特有のリスクがあります。
- 西部(特にカリフォルニアなど): 野生動物との接触による感染症(例:リスなどによるペスト)
- 東部(特にライム病の流行地域): マダニが媒介するライム病
- 南部: デング熱、ジカ熱(蚊が媒介する感染症)
渡航先の地域情報を事前に確認し、必要に応じて医師に相談することをおすすめします。
子供の就学に必要な予防接種
お子様がアメリカの学校(幼稚園、小学校、中学校、高校)に入学する場合、州ごとに定められた予防接種の接種記録の提出が義務付けられています。これは、学校内での感染症の蔓延を防ぐための措置です。
- 州ごとの要件確認: 必要な予防接種の種類と回数は州によって異なります。渡航先の州の保健局ウェブサイトなどで最新の情報を必ず確認しましょう。学校によっては、入学前の見学時に予防接種証明書の提示を求められるケースもあります。
- 一般的な必要とされる予防接種: 一般的に、以下の予防接種が求められることが多いです。ただし、回数や接種時期は州によって異なるため、必ず確認が必要です。
- MMR(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹): 通常2回接種。
- 水痘(水ぼうそう): 通常2回接種。
- DPT/DTaP(ジフテリア・百日咳・破傷風): 複数回接種。年齢によって必要な回数が異なります。
- ポリオ: 複数回接種。
- B型肝炎: 通常3回接種。
- Hib(インフルエンザ菌b型): 複数回接種。
- 肺炎球菌: 複数回接種。
- 予防接種記録の準備: 日本で接種した予防接種の記録(母子手帳など)を英訳しておきましょう。医療機関によっては、英文の予防接種証明書を発行してくれる場合もあります。記録がない場合は、抗体検査を受けて、抗体があるかどうかを確認する方法もあります。
- かかりつけ医との連携: かかりつけの医師にアメリカの就学に必要な予防接種について相談し、不足しているものがあれば接種計画を立てましょう。
予防接種費用(日本とアメリカ)
予防接種の費用は、日本とアメリカで大きく異なります。
- 日本:
- 定期接種は公費負担のため、基本的には無料です。
- 任意接種は自己負担となります。費用は医療機関によって異なりますが、例えばA型肝炎は約8,000〜10,000円/回、B型肝炎は約4,000〜6,000円/回程度です。
- アメリカ:
- 医療保険に加入していれば、予防接種費用は保険でカバーされることが多いです。ただし、保険の種類やプランによってカバー範囲が異なるため、事前に確認が必要です。
- 医療保険に加入していない場合は、高額な費用がかかることがあります。例えば、MMRワクチンは約100〜150ドル/回、水痘ワクチンは約100〜150ドル/回程度です。州や医療機関によって費用は異なります。
- 低所得者向けの無料または低料金の予防接種プログラムが提供されている場合もあります。
予防接種を受ける際の注意点
- 早めに医療機関に相談: 予防接種の種類によっては、複数回の接種が必要なものや、接種後一定期間経過してから効果が現れるものがあります。渡航予定日の数ヶ月前から医療機関(トラベルクリニックなど海外渡航に詳しい医療機関がおすすめです)に相談し、スケジュールを立てて接種を進めましょう。
- 予防接種証明書(イエローカード)の取得: 予防接種を受けた際には、予防接種証明書(イエローカード/国際予防接種証明書)を発行してもらい、渡航時に携帯しましょう。これは、海外で医療機関を受診する際に役立ちます。
- 母子手帳の英訳: お子様の予防接種記録が記載された母子手帳は、英訳しておくと、現地の医療機関で役立つ場合があります。
その他の健康管理
- 健康診断: 渡航前に健康診断を受け、健康状態を確認しておきましょう。持病がある場合は、英文の診断書や処方箋を用意しておくと、海外で医療機関を受診する際に役立ちます。
- 常備薬の準備: 服用している薬がある場合は、英文の処方箋と必要な量の薬を持参しましょう。アメリカでは、日本の薬と同じ成分の薬が手に入らない場合があります。また、市販薬でも日本と成分が異なる場合がありますので、常用しているものがあれば持参しましょう。
- 海外旅行保険への加入: 万が一の病気やケガに備えて、海外旅行保険に加入しておきましょう。医療費が高額になるアメリカでは、海外旅行保険は必須です。補償内容をよく確認し、自身の渡航目的に合った保険を選びましょう。
- 歯科検診: 渡航前に歯科検診を受け、虫歯などの治療を済ませておきましょう。海外で歯科治療を受けるのは、費用が高額になる場合があります。
- コンタクトレンズの予備: コンタクトレンズを使用している場合は、予備を持参しましょう。洗浄液なども忘れずに持参しましょう。
- 時差ぼけ対策: 長時間のフライトで時差ぼけになる可能性があります。渡航前から生活リズムを調整したり、渡航後に時差ぼけ対策グッズを利用したりするなどの対策を講じましょう。
アメリカで注意すべき健康リスク
- 日焼け: アメリカは日差しが強い地域が多いため、日焼け対策をしっかりと行いましょう。日焼け止めクリーム、帽子、サングラスなどを活用しましょう。
- 乾燥: 乾燥した気候の地域も多いです。こまめな水分補給を心がけ、必要に応じて保湿クリームなどを使用しましょう。
- 食生活の変化: 食生活の変化によって体調を崩すことがあります。バランスの取れた食事を心がけ、水分を十分に摂りましょう。
- 水: 地域によっては水質が異なるため、ミネラルウォーターを購入するなど、注意が必要です。
まとめ
アメリカでの生活を安心して送るためには、渡航前の健康管理が非常に重要です。特に、お子様の就学を予定されている場合は、渡航先の州の予防接種要件を早めに確認し、必要な準備を進めてください。予防接種費用は日本とアメリカで大きく異なるため、医療保険の加入状況も考慮に入れることが大切です。
関連記事
渡航準備に関する記事はこちら: 渡航準備
コメント